「再稼働反対」と「脱原発」は同時に語られると混乱する

私は、今回の「再稼働反対」「脱原発」を掲げるデモを観察する中で混乱を感じている。

それは、デモという性質上当然のことではあるが、多義的な主張が「再稼働反対」「脱原発」というシンプルなスローガンで包括されているからである。
まず確認したいのは「再稼働反対」と「脱原発」は延長線上にはあるが時間の範囲が違う主張をしている点である。

◆今回のデモにおける「再稼働反対」というスローガンを言葉通りで考えるならば、決行される寸前の大飯原発の再稼働を「今、ここ」で食い止めるという主張である。

個人的見解を加えるならば、
再稼働は法的根拠(電気事業法第39条)に基づき経産省が認めたために実行される。
「今、ここで」「再稼働反対」を主張することは、この法的根拠を無視せよと主張すること同義ではないだろうか。
 だとすれば、あってはならないことである。当然のことながら、日本は法治国家である。デモに限らず、世論の高まりによって法が無視される事態が発生することは危険だ。原発の停止は、しかるべき手続きによって実行されなければならない。


◆次に、「脱原発」というスローガンである。
この主張は「いつまでに」原発を達成するのかという合意がなされていない。

全体で考えれば、脱原発路線は堅い。
2012年3月の日本世論調査会、全国面接世論調査脱原発支持は80%に達している。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-188827-storytopic-11.html

しかし、「いつまでに」という視点で考えれば、意見は割れている。
大飯原発再稼働問題が注目を浴びるようになった2012年5月。時事通信社が実施した原発の再稼働に関する世論調査では、「国内の原発を今後どうすべきか」の問いに対し、「依存度を減らし、将来なくすべき」という回答が40.2%。調査当時、国内の全原発が停止したことを踏まえ、「このまま稼働させず、代替エネルギーでしのぐべきだ」20.5%。「判断は時期尚早」16、6%。「現状の数を維持し稼働」15、1%という結果が出ている。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201205/2012052100597&g=eco


まとめれば、
「再稼働反対」のスローガンは、「今、ここ」の話をしている。
一方、「脱原発」は「いつまでに」という主張が明確になっていない。
そのために、「再稼働反対」と「脱原発」の似て非なるスローガンを同時的に主張することで、今回のデモは(私個人だけかもしれないが)混乱を招いたと考えている。


追記
"「今、ここで」「再稼働反対」を主張することは、この法的根拠を無視せよと主張すること同義ではないだろうか。"
主張することを否定しているのでない。表現することは自由である。しかし、それによって実際に大飯原発が停止する事態になったとしたら、大変危険である。ということを指摘したい。